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レベニューキャップ制度について分かりやすく解説

本記事ではレベニューキャップ制度について解説します。

2023年4月以降の電気料金値上げの一因となる制度だよ。

目次

レベニューキャップ制度の仕組み

前提知識 託送料金とは?

電気は「発電」⇒「送電・変電」⇒「配電」を経て一般家庭へ送られます。
送電~配電で一番身近で分かりやすい例は、電線や電柱です。

電力業界において、発電と小売は自由化されていますが、送配電業務は極めて公益的であるため、
今も各地域で独占的に運用されています。(例:東京電力パワーグリッド等)

これらの送配電業務にかかるお金は、「託送料金」として電気料金に含まれ、最終的に需要家が負担しています。
つまり、託送料金は「基本料金」及び「従量料金」の構成要素の一つということです。
そのため、託送料金が値上げされると電気料金は高くなることとなります。

例えば、東京電力管内の低圧託送料金は平均9.92円/kWh(2023年4月~)のため、1kWhあたり10円弱は託送料金ということになります。

「託送料金」は普段意識しづらい部分だから、消費者の理解を中々得られないという問題があるね。

2023年3月までの託送料金は、前述の送配電業務に要する費用に一定の利潤を乗せた金額として定められてきました。
これは「総括原価方式」と言われる算出方法です。

公益性の高い事業だから、事業の安定性が求められる。
基本的に赤字は出ないような設計になっているということだね。

しかし総括原価方式には様々な問題があり、2023年4月よりレベニューキャップ制度が導入されることとなりました。
問題点については以下に説明します。

総括原価方式の問題点

総括原価方式は一定の利益が確保されているため、送配電会社にとって不要な支出が増えてしまう危険性を孕んでいます。
また、経営効率化を実施したとしても託送料金の値下げとして反映されるため、自社の利益に繋がりません。
よって、送配電会社のコストカットに対する意欲が抑えられてしまう制度であるとも言えるのです。

今後再エネを積極的に導入していくためにも、送配電設備を増強していくことは非常に重要です。
また、日本の送配電設備は老朽化が進んでおり、それらの維持更新にかかる費用も今後必要となります。
一方、送配電設備の増強にかかる費用は託送料金として最終的に需要家が負担することとなるため、
送配電会社の経営効率化により、託送料金を可能な限り安く抑えることが求められます。

「送配電設備の増強」と「経営効率化」は、総括原価方式だと送配電会社の経済的メリットが小さくなってしまうため、上手く両立しづらいのです。
これらを実現するため、2023年4月から導入されるのがレベニューキャップ制度となります。

レベニューキャップ制度とは?

レベニューキャップ制度は、非常に簡単に言うと以下のような制度です。

収入の上限を一定期間(5年)固定するから、送配電会社はその中でやりくりしてね!
経営効率化等を実施すればそのまま会社の利益になるよ!

前述した総括原価方式においては、コストカット等を実施したとしても、その分過度な利益を得ていると判断され、結果的に翌年以降の自社の収益を減らしてしまうこととなってしまいます。

一方レベニューキャップ制度は、「収入上限」を5年固定するため、5年のスパンにおいて送配電会社は利益確保のため、コストカット等を行うインセンティブが与えられます。
※「収入上限」を超えて過度に利益を得ていないかどうかは期間中も審査されます。

そして5年の期間が終わった後は、次の5年の「収入上限」の審査が行われます。
その際、送配電会社によるコストカット等の効果が出ていれば、次の5年の「収入上限」は下がり、その分託送料金が安くなって、需要家の電気料金が安くなることとなります。
電力・ガス監視等委員会資料より引用

今後脱炭素社会を目指すにあたり、長い目で見て電気料金を安く抑えていくための仕組みであるということだね。

レベニューキャップ制度の実装について

2023年度~2027年度の「収入上限」決定

レベニューキャップ制度は2023年4月から始まる制度であるため、2022年度の夏に各一般送配電会社が今後の事業計画及び収入の見通しを提出しました。

その後に国による審査が冬まで実施され、2023年4月から2028年3月までの「収入上限」は承認されました。
各一般送配電会社は今後5年の間、利益確保のために送配電設備増強と経営効率化の両立に励んでいくこととなります。

地域ごとの託送料金値上げ幅について

各一般送配電会社が送配電設備の増強等の事業計画を盛り込んだ結果、2023年度からの5年間における託送料金は2022年度の水準よりも値上げされることとなりました。
各地域ごとに託送料金に1~2円程度差があるため、これも小売電気料金の地域差に繋がります。
以下が各社より発表されている内容です。

北海道電力ネットワーク

値上げ幅(概算)新単価(概算)
低圧+0.77円/kWh10.02円/kWh
高圧+0.6円/kWh4.81円/kWh
特別高圧+0.12円/kWh2.83円/kWh
北海道電力ネットワークHPより引用
上記の表は公式HPに掲載された概算です。
実際は基本料金、従量料金に別々に値上げが設定されていますので、詳細については以下のページをご参照ください。

東北電力ネットワーク

値上げ幅(概算)新単価(概算)
低圧+0.98円/kWh10.75円/kWh
高圧+0.27円/kWh4.83円/kWh
特別高圧+0.28円/kWh2.32円/kWh
東北電力ネットワークHPより引用
上記の表は公式HPに掲載された概算です。
実際は基本料金、従量料金に別々に値上げが設定されていますので、詳細については以下のページをご参照ください。

東京電力パワーグリッド

値上げ幅(概算)新単価(概算)
低圧+0.49円/kWh9.92円/kWh
高圧+0.51円/kWh4.66円/kWh
特別高圧+0.46円/kWh2.64円/kWh
東京電力パワーグリッドHPより引用
上記の表は公式HPに掲載された概算です。
実際は基本料金、従量料金に別々に値上げが設定されていますが、2023年3月19日現在、以下のページに掲載されている表が更新されていないため確認できません。

中部電力パワーグリッド

値上げ幅(概算)新単価(概算)
低圧+0.43円/kWh9.51円/kWh
高圧+0.46円/kWh3.92円/kWh
特別高圧+0.15円/kWh2.07円/kWh
中部電力パワーグリッドHPより引用
上記の表は公式HPに掲載された概算です。
実際は基本料金、従量料金に別々に値上げが設定されていますが、2023年3月19日現在、以下のページに掲載されている表が更新されていないため確認できません。

北陸電力送配電

値上げ幅(概算)新単価(概算)
低圧+1.17円/kWh8.98円/kWh
高圧+0.8円/kWh4.57円/kWh
特別高圧+0.52円/kWh2.35円/kWh
北陸電力送配電HPより引用
上記の表は公式HPに掲載された概算です。
実際は基本料金、従量料金に別々に値上げが設定されていますので、詳細については以下のページをご参照ください。

関西電力送配電

値上げ幅(概算)新単価(概算)
低圧+0.27円/kWh8.2円/kWh
高圧+0.71円/kWh4.85円/kWh
特別高圧+0.08円/kWh2.38円/kWh
関西電力送配電HPより引用
上記の表は公式HPに掲載された概算です。
実際は基本料金、従量料金に別々に値上げが設定されていますので、詳細については以下のページをご参照ください。

中国電力ネットワーク

値上げ幅(概算)新単価(概算)
低圧+1.34円/kWh9.63円/kWh
高圧+0.71円/kWh4.75円/kWh
特別高圧+0.22円/kWh2.07円/kWh
中部電力ネットワークHPより引用
上記の表は公式HPに掲載された概算です。
実際は基本料金、従量料金に別々に値上げが設定されていますが、2023年3月19日現在、以下のページに掲載されている表が更新されていないため確認できません。

四国電力送配電

値上げ幅(概算)新単価(概算)
低圧+0.93円/kWh9.72円/kWh
高圧+0.56円/kWh4.81円/kWh
特別高圧+0.09円/kWh2.38円/kWh
四国電力送配電HPより引用
上記の表は公式HPに掲載された概算です。
実際は基本料金、従量料金に別々に値上げが設定されていますので、詳細については以下のページをご参照ください。

九州電力送配電

値上げ幅(概算)新単価(概算)
低圧+0.94円/kWh9.68円/kWh
高圧+0.61円/kWh4.6円/kWh
特別高圧+0.19円/kWh2.62円/kWh
九州電力送配電HPより引用
上記の表は公式HPに掲載された概算です。
実際は基本料金、従量料金に別々に値上げが設定されていますので、詳細については以下のページをご参照ください。

沖縄電力

値上げ幅(概算)新単価(概算)
低圧+1.39円/kWh11.88円/kWh
高圧+0.97円/kWh6.73円/kWh
特別高圧+0.56円/kWh4.21円/kWh
沖縄電力HPより引用
上記の表は公式HPに掲載された概算です。
実際は基本料金、従量料金に別々に値上げが設定されていますので、詳細については以下のページをご参照ください。

今後について

今回で2028年3月までの託送料金が承認されたことになるため、次の託送料金改定は2028年4月からの予定となります。
※災害や戦争等の予想不可能な事象が原因の突発的な支出増があった場合は、特別な対応が実施されることもあります。

レベニューキャップ制度の導入意義からすると、次の改訂では託送料金が下がることが期待されますが、カーボンニュートラルに向けて送配電会社の求められる役割は今後どんどん大きくなっていくため、将来的な事業計画によっては逆に高くなってしまうことも考えられます。

託送料金の値上げは電気料金に直結するため、送配電会社の経営効率化に期待したいところです。

まとめ

  • レベニューキャップ制度はカーボンニュートラルに向け、長い目で見て電気料金を安く抑えていくための仕組み
  • 短期的に見ると電気料金の値上げの一因となっている
  • 値上げ幅には地域差がある

再エネ導入促進のために送配電の系統増強は急務。
普段意識しづらいけど、託送料金はとても大事な仕組みだよ。

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