本記事では電気料金の一部である「燃料費調整制度」について、歴史から計算方法まで詳しく解説します。
ウクライナ情勢の影響で急激に高くなったことで話題になっているね。
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目次
燃料費等調整制度とは?
2022年現在、大手電力会社は日本全体で約7割の発電を火力発電で賄っています。
とはいえ、日本のエネルギー自給率は2019年時点で約12.1%。
火力発電に使用する化石燃料の殆どは海外からの輸入であり、社会情勢や為替の影響を多分に受けます。
こういった影響は電力会社の努力で回避することが困難であるため、電力会社の経営安定化のために1996年から導入されたのが「燃料費等調整制度」です。
簡単に言えば「燃料の輸入価格が高いとき上がり、輸入価格が安いとき下がる」制度となっています。
電力会社ごとに定めることとされていますが、新電力も地域大手電力会社と同額となっていることが殆ど。
ただし電力会社が得をする制度かといえばそうでもなく、燃料費が安いときはマイナス調整(電気料金の値下げ)がなされます。
実際2021年は東京電力管内でずっとマイナス調整でした。
2022年10月現在はウクライナ制裁の影響で国際的に燃料価格が高止まりしており、歴史的円安も相まって燃料費等調整額は今までに無いほど高くなっています。
今の社会情勢下で悪者にされているけど、燃料価格が安定しているときは値下げに繋がるから決して悪い制度ではないんだ。
燃料費等調整額の計算方法
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≧ 基準燃料価格 か否か
ここでAは原油、Bは天然ガス、Cは石炭の平均輸入価格を指します。これは国が出している統計の数字。 α、β、γは非常に簡単に言えばその電力会社がたくさんその燃料を使って発電していれば大きくなる数字です。 基準燃料価格は電力会社が定めています。 α、β、γ、基準燃料価格は電力会社ごとに異なり、国の認可を受けることで電力会社は内容を変更可能です。 例えば東京電力は火力発電の割合が大きいためαβγの係数及び基準燃料価格が大きく設定されており、「燃料費等調整額」の振れ幅が他の地域大手電力会社と比べても大きくなっています。 上記の計算結果が「基準燃料価格」よりも大きければプラス調整で電気料金に加算される形となり、逆に小さければマイナス調整で値下げとなります。
燃料費等調整額の上限について
消費者保護の観点から、燃料費等調整額には旧一般電気事業者の「特定小売供給約款(主に従量電灯B/C)」において上限が設定されています。 一般的に新電力のプランは地域大手電力会社よりも「基本料金」「従量料金」が安く設定されていることが多いですが、それ以上に「燃料費等調整額」に関するメリットが現状は非常に大きくなっています。
現状「燃料費等調整額」は上限を突破して際限なく上がっているから、上限で止まってくれるのはありがたいね。
ただし2023年4月以降は一部旧一般電気事業者において「特定小売供給約款」の値上げが発表されています。
多くの場合は同時に「燃料費等調整額」の計算方式が変更されて値上げ分が相殺されることになるかと思いますが、どのプランがお得かどうかは電力会社によって変わってくることになります。
各電力会社の値上げについては当サイトでも取り上げる予定だよ。
燃料費等調整額の今後について
燃料費等調整額の上限については現在の社会情勢に合っていないのではないか、という意見があります。 私もその通りだと思いますし、旧一般電気事業者がこの上限の影響で赤字を垂れ流している中で国が放っておくことは考えにくいと思われます。 実際最近の国の審議会では、規制料金から燃料費等調整額の上限をなくすという意見や市場連動型にするという意見が委員の先生方から出ています。 既に先んじて特定小売供給約款の値上げを発表している旧一般電気事業者も存在していますが、値上げをしない事業者に対しても今後何らかの救済措置が行われるでしょう。
まとめ
- 「燃料費等調整制度」は、簡単に言えば「燃料の輸入価格が高いとき上がり、輸入価格が安いとき下がる」制度。
- 「燃料費等調整額」には旧一般電気事業者の一部プランにおいて上限が存在する。
- 「燃料費等調整制度」は今後仕組みそのものが変わる可能性が高い
状況によって最適なプランは変わってくるから、電力についての正しい知識を身に着けて対応力を上げていこう。